リチャード・マシスン「ある日どこかで」☆☆

ある日どこかで

1976年の世界幻想文学賞受賞作です。

脳腫瘍で余命幾ばくも無いと診断された青年脚本家のリチャードは、目的もなく出かけた旅の途中で宿泊したサンディエゴの由緒あるホテルで、90年前に撮られた写真に強く惹かれる。

そこに写っていたのは、当時の人気女優エリーズ・マッケナ。

写真のエリーズに一目惚れしたリチャードは彼女のことを調べ始め、彼女がホテルに滞在している時の宿泊客名簿の中に自分と同じ名前を発見する。

しかもその男のサインは自分の筆跡と瓜二つだった。

まさか過去に遡ることが出来るのか?

リチャードは必死になって過去への旅を念じ始めるのだが・・・。


時を超えたラブストーリーというのは、人の心を捕まえる力があるようで、この作品も評判を博し映画化されています。

映画は公開時にはあまり話題になった記憶がないのですけど、公開後に人気が出て「何度見てもすごい50本」という映画作品の中に選ばれています。

また宝塚歌劇でも上演されているようです。

邦題は本も映画も「ある日どこかで」となっていますけど、原題は違うタイトルで、 本が「Bid Time Return?」、映画は「SOMEWHERE IN TIME」です。

映画にもファンが多いようですが、管理人は原作の方が好きです。

主人公リチャードが過去に行く方法はある種の自己催眠のようですが、それが可能となるのは脳に腫瘍が出来て余命幾ばくもないリチャードならではと思えば、話にすんなりと入れるように思います。

リチャードが訪れる19世紀末の情景に郷愁を誘われるし、リチャードとエリーズの出会いの場面にはロマンチックな雰囲気があります。

ヒロインのエリーズが女優という職業から受ける印象と違って、純粋で可憐で愛らしくて誰からも愛されるような女性として描かれています。

何かを求めているけどそれが何だが分からないでいるエリーズが、突然彼女の前に現れた初対面のリチャードに向かって言う「あなたなの?」というセリフが良いですね。


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