スコット・リンチ「ロック・ラモーラの優雅なたくらみ」☆☆☆

ロック・ラモーラの優雅なたくらみ

中世イタリアの水の都を連想させるような尖塔と運河が美しい都市カモール。都を支配するのはニコヴァンテ公爵とその配下の貴族たち、そして都の闇社会を支配するのは残虐非道なカパ・バルサヴィ。

表の支配者と裏の支配者が結んだ秘密の不可侵協定により秩序を保っているカモールに、ある日灰色王という謎の男が突然現れて、カパ・バルサヴィの配下の盗賊たちを次々と殺戮していく。

そうした中で、生まれながらにして人を欺く才能の持ち主ロック・ラモーラは、武器を縦横に操るジャン、一卵性双生児のカーロとガルド、そしてすばしっこいチビのバグと共に若き詐欺集団の悪党紳士団を結成して、カパ・バルサヴィの目を逃れながら裕福な貴族たちから金を騙しとっていた。

しかし灰色王とその配下の魔法使いの恐るべき奸計に落ちたロックは、都の根底を揺らす陰謀に心ならずも巻き込まれて行く・・・。


小さい頃に親しんだいくつかの物語を巧みに組み合わせたような雰囲気の世界観がなかなか魅力的で、こういう小説って管理人は好きです。

主人公が悪党紳士団という詐欺師の集団を率いる若い天才詐欺師というのも面白いし、都の支配者ニコヴァンテ公爵と闇社会を統べるカパ・バルサヴィ、それに殺戮を繰り返す灰色王が加わっての、三つ巴四つ巴の騙し合いやら争闘が一筋縄ではいかない筋書きで楽しめます。

この作者はファイナル・ファンタジーが大好きなゲーマーだそうで、確かにこの作品にはそういうRPGの雰囲気が感じられます。

こういう悪党がお互いに命がけで騙し合う物語ってのは、それだけで充分面白い作品になりますけど、それに加えて魔法使いや武術の達人や謎の密偵などが登場して来て、物語が幾層にも膨らんでいる作品です。

しかしながら続編が出ているはずなんですが、全く翻訳される気配がなく、そこが残念です。日本では人気が出なかったんでしょうね・・・。


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