ディヴ・ダンカン「力の言葉」☆☆☆

力の言葉

この世の中には不思議な力を持つ言葉があり、それを一つでも知っていれば達人の能力が得られ、力の言葉を多く知れば知るほど能力が強くなるが、5つ以上の言葉を知ると力の強さに耐えきれずに破滅してしまう。

今世界には、四つの力の言葉を知る四人の魔法使いがいて、世界に君臨している。

力の言葉にはそれぞれ強弱があり、又その言葉を知る人間が少なければ少ないほど力は強い。

一つの力の言葉を多くの人間が知れば知る程、言葉が持つ力は弱まるため、力の言葉を知った人間は、それを他人には知られないようにするし、独り占めするようになる。

そんな世界パンデミアの北の端にある極寒の小王国クラスネガルに住むラップは、とても勘の良い少年だった。

クラスネガルの王女イノスとは幼なじみで、密かに憧れにも似た気持ちを抱いているが、身分違いのため表に出すことはない。

そんなある日、イノスが南の国に花嫁修業に出かける事が決まる。

ところがイノスが出立した後に、クラスネガル王が突然危篤となり、ラップは剣の達人であり世界を何度も旅したという王国の客人アンドルと共に、イノスにその事を知らせるようと旅に出る。

しかし王国を離れた途端に、今までラップに親切だったアンドルの様相が一変し、ラップの持つ力の言葉を教えるように迫る。

ラップには力の言葉を知っている自覚はない。そんなラップを、アンドルは野蛮なゴブリン族の中に置き去りにして去っていき、残されたラップは・・・。


不思議な力の言葉が存在する世界パンデミアを舞台にした、世界観のしっかりとした長編ファンタジィで、ともかく言葉を知っているだけでものすごい能力が得られるという、修行も何も不要なお手軽な魔法を中心にした物語です。

「魔法の窓」「荒涼たる妖精の地」「荒れ狂う海」「帝王と道化」の4部で構成されています。

ラップとイノスのそれぞれが巻き込まれていく苦難と冒険と成長の旅が描かれ、主人公のラップは様々な苦難を乗り越えて、魔法の言葉を一つ一つ手にして、才能を開花させていきます。

辺境の地に育った何も知らない田舎少年が、イノスへの愛を自覚して、周囲に翻弄されながら苦労の末に大いなる力を得ていく過程がとても面白い作品です。

読み応えのあるハイ・ファンタジィで、この続編があると聞いて管理人は邦訳を心待ちしていましたが、結局出版されませんでしたね。

こういう骨格がしっかりとしたファンタジィは日本人受けしないんでしょうか?いささか残念です。


このページの先頭へ