デイヴィッド・リス「紙の迷宮」☆☆☆

紙の迷宮

元プロボクサーの調査員ウィーヴァーの父親は株式市場の仲買人だったが、つい最近事故で死んでしまった。

そのウィーヴァーの元にバルフアと名乗る男が調査を依頼しに訪れる。

バルフアによれば、彼の父親は破産が原因で自殺した事になっているが、どうも殺された疑いが強いと言う。更に亡くなったウィーヴァーの父親の事故も実は殺人事件で、この二つの事件は関連しているという。

半信半疑ながらウィーヴァーは調査を開始するのだが・・・。


株式市場が創設されて間もない18世紀初頭のイギリス・ロンドンを舞台にした、金融取引に関わる事件を扱ったアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞の歴史ミステリィです。

現代人の感覚からすると相当野蛮に見える当時の文化や風俗などが、非常に興味深い作品です。

時代考証がとてもしっかりとされているようで、そうかこの頃のイギリスには未だ警察すらないんだ、と妙な感心をしてしまいました。

当時のロンドンよりも同時期の江戸の方が余程民意が優れていて、社会制度もしっかりとしていて、今の価値観から見ても先進的な都会だったと聞きますし、実際にこの作品を読むとそんな印象を受けます。

世界初の先物市場だという堂島の米相場の方が、ロンドンの株式市場よりも先進的だったみたいで、そういう事を思いながら読むと更に面白いですね。

この作品は犯人そのものは大して意外ではなかったですけれども、物語の構成がしっかりしていて、時代背景がとても興味深くて、実に面白いミステリィでした。

 

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