ジョー・ホールドマン「擬態―カムフラージュ」☆☆

擬態―カムフラージュ

海軍提督ハリバートンからの依頼により、太平洋の深海で発見された100万年以上も昔のものと推測される卵形の謎の物体を引き上げた海洋工学の専門家ラッセルは、何よりも重く、いかなる手段を持っても傷一つ付けることが出来ない物体の構造調査に行き詰まっていた。

そんなラッセルの元に、若い女性の姿に変身したエイリアン「変わり子」が近づき、ラッセルの調査チームに入りこんだ。

はるか昔から地球に生息し、様々な生物に姿を変えて生き続けてきた「変わり子」は、自分の出自の謎を解く鍵が、この物体にあると直感していた。

しかし地球には、もう一体のエイリアン「カメレオン」が存在していた。


100万年前にM22星団から地球に来た変身能力を持つ不老不死のエイリアン「変わり子」と、「変わり子」のものと思われる謎の人工物を深海から引き上げた科学者たち、更に「変わり子」とは別種族ながら同じく不老不死のエイリアンである「カメレオン」を交えて描いたSF小説です。

100万年前に飛来してからの長期間を海の中で過ごし、海洋生物として激しい生存競争の中を生きてきた「変わり子」は、ある時陸に上がり、たまたま出会った人間の若者を殺害して彼になりすまし、記憶を失った人間として生活を始めます。

しかし人間の中で暮らし、密かに人間たちを観察し、様々な経験を重ねるうちに、「変わり子」は徐々に人間としての考え方を習得していき、倫理観らしきものを身につけていきます。

一方で「カメレオン」は、初めから人間として生きてきて、生物を殺戮することに良心の呵責など感じない異星人です。

この二人のエイリアンの対決がメイン・テーマかと思いましたが、最後の場面であっけない幕切れになる以外は、基本的には「変わり子」が変身していく過程を描いた作品です。

サスペンスに満ちた冒険SF小説をイメージして読みましたが、全体的に思索的なハードSF小説でした。

エンターティメントを想像していた管理人には全体的にやや退屈な作品で、今ひとつという感じです。


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