池井戸潤「下町ロケット2 ガウディ計画」☆☆☆
第145回の直木賞を受賞した「下町ロケット」の続編となるビジネス小説ですけど、登場人物が重なるだけで基本は別の物語ですので、こちらから読んでも特に問題はありません。
日本有数の大企業・帝国重工にロケットエンジンのバルブシステムを納入することで、経営的にも安定し、従業員のプライドも向上した東京大田区の中小企業・佃製作所に、大メーカー日本クラインから医療機器用のバルブの試作品作成の依頼が入る。
技術的に難しい設計で、さらに相当に価格を叩かれた発注だったが、量産体制に入った後でも受注を貰える前提で試作品を作り上げた佃製作所だが、日本クラインは量産品では設計を変更すると言い出し、それに対応できない佃製作所には発注しないと言ってくる。
元々日本クラインには佃製作所に量産品を作らせる積りはなく、NASAの技術者だった椎名直之が経営するサヤマ製作所に発注する予定だった。
日本クラインの試作品製作で赤字を出した佃製作所に、更にもう一つの危機が訪れる。
佃製作所の最重要商品である帝国重工向けバルブシステムについて、次期ロケットエンジンではコンペを実施するというのだ。しかもその競合相手はサヤマ製作所で、帝国重工内にはNASA技術者だった椎名を推す声も強いと言う。
そんな中、佃製作所に心臓の人工弁開発に協力して貰えないかとの依頼が持ち込まれる。
北陸医科大学の心臓外科医・一村隼人教授と地場の繊維会社サクラダが開発を進めているこの人工弁は、完成すれば多くの心臓病患者を救う事になるという。
しかし医療機器の開発には時間もコストもかかる上、機器に問題があった場合には訴訟のリスクも存在する。
崖っぷちの中小企業・佃製作所にはリスクが大きすぎると、一度は依頼を断った社長の佃航平だったが、一村の人望とサクラダ社長・桜田章の人工弁にかける熱意に打たれ、開発に参加することを決める。しかし・・・。
技術力はあるけど経営は厳しい状況が続く中小メーカー佃製作所の佃航平を中心とした、真摯にものづくりに励む日本の中小企業を応援するようなビジネス小説の第2弾になります。
おそらく現実にはこうはいかないでしょう。
でも自分に出来ることを信じて、世の中の役に立つモノを作る事に誇りを抱いて、夢を追いかける技術者たちの格好良さを見事に描いているように思います。
直木賞を受賞した前作の方が、登場人物の描写がきちんとされていて、内容的にも良く出来ていたかな、とは思いましたが、勧善懲悪で最後はスカッとする物語には安心感があって、やっぱり池井戸作品は面白いですね。