源氏鶏太「東京・丸の内」☆☆☆

東京・丸の内

両親に先立たれ都内のアパートに一人暮らしの高宮曜子は、東京・丸の内のSビルにある第一化学工業の総務課に勤務する22歳のOLで、恋人の葉山信夫との結婚を夢見ている。

葉山信夫も曜子との結婚を望んでいて、ある日銀座のレストランで曜子を母親に会わせるのだが、曜子の事が気に入らない母親は、親戚のいかにも育ちの良いお嬢さん風の娘・武山明子を密かに呼んで、曜子に葉山家とは身分が違う事を思い知らそうとする。

その場では曜子に同情的な態度を示す信夫は、結局母親には逆らえず、その後は曜子のことを少し疎むような態度になっていく。

一方、第一化学工業と同じ資本系列の第一機械工業に勤務する営業マン・加部一喜は、社員食堂で出会った曜子に恋をしていたが、曜子に恋人がいて、更にその恋人が葉山信夫であった事にショックを受けていた。

と言うのも、加部一喜と葉山信夫は大学の同級生で、お互いに嫌い合う仲だった。

しかし曜子が葉山の母親に冷たくあしらわれてショックを受けたという話を聞いた加部は、自分の気持ちを抑えて、葉山と曜子の局面打開のため武山明子と曜子を会わせる。

実は武山明子の兄は加部の先輩で、加部は武山家と親しくしていて、明子は加部一喜に恋をする女性だった。

葉山の母親に頼まれて嫌な役割を演じ自己嫌悪に陥った武山明子は、曜子と再会して彼女を応援することを宣言するが、葉山信夫は第一機械工業の専務・星山の娘との縁談が決まったことから、曜子とは別れると告げて・・・。


若いサラリーマンやOLの恋愛模様に、会社の派閥争いや出世競争、人としての正義感なども描いた昭和のサラリーマン小説の傑作です。

誇張された人物像が単純で読みやすい物語です。

主人公の加部一喜は若いけれども立派な人物ですし、高宮曜子は恵まれない境遇の娘ですが毅然とした態度が素敵だし、二人を助ける周囲の人たちもそれぞれ善人で気持ちが良い。

また悪役は単純で底が浅く、厚かましいだけの人間が多いので、それ程嫌悪感を感じません。

舞台設定は当然ながら古いのですけど、見事な勧善懲悪の物語となっていて、管理人はこの作品がとても気に入っています。


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