リンダ・ハワード「氷に閉ざされて」☆☆

氷に閉ざされて

歳の離れた資産家男性と結婚した直後に夫が病死し、未亡人となったベイリー。

莫大な遺産を信託財産にされ定額の分配金しか受け取れない二人の子供たちは、遺産目当てで結婚したベイリーが自分たちの遺産を食い物にしていると公言し、反目している。

しかしベイリーの結婚は雇用主だった夫との契約結婚だった。

自分が死んだ後に、放蕩者の子供たちが財産を食いつぶして路頭に迷う事を恐れた夫が、遺産を信託基金にして、堅実なベイリーに管理と運用を頼みこんだものだった。

確かに亡夫との契約で受け取る収入は多く、贅沢な暮らしを送れるが、欲深な子どもたちの相手や資産の管理にはストレスがたまる。

そんなベイリーの気晴らしは、弟夫婦と一緒にたまの休暇を楽しむことで、今回も弟夫婦と待ち合わせた休暇先のデンバーまで小型飛行機をチャーターしたが、フライト・パイロットはいつも担当している陽気で明るいブレットではなく、冗談のひとつも言わず、何となくベイリーを見下しているような感じがする冷たいジャスティス。

二人きりの気まずい雰囲気のフライトだったが、二人の乗る小型飛行機に突然トラブルが発生し、ジャスティスの懸命な操縦にも関わらず飛行機はアイダホの雪深い山中へ不時着してしまう。

何とか一命は取り留めたベイリーだが、飛行機は大破しジャスティスは意識不明の重傷を負い身動きしない。

ベイリーは何とかジャスティスを救い出すが・・・。


食べるものも寒さを防ぐものも無く、救助を要請する事も出来ない状況で、怪我人を抱えながら健気に頑張る女性ベイリーと、見事な操縦で墜落を免れて二人の命を救い、意識を取り戻してからはベイリーと二人で生き延びる算段をする元空軍パイロットのジャスティスが、初めは反目しながらも協力している内に、お互いが抱いていた悪い印象が変化して惹かれ合っていくというロマンス小説です。

事故の原因は、誰かが燃料が満タンに見えるように装ったこと。

しかも緊急信号を発しないような細工までされている。

いつまで待っても救助が来ないと知った二人は、身を寄せ合いながら雪山からの脱出を試みます。

この不死身さには相当ムリがありますが、過酷な状況下で展開される息もつかせないアドベンチャーと、どことなくゆったりとしたユーモラスな雰囲気が面白い作品です。


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