山田宗樹「百年法」☆☆☆

百年法

現在の世界とは異なる別の世界の別の日本が舞台。

原爆を6発投下され戦争に敗れた日本に、戦勝国アメリカは永遠に若さを保つ技術HAVIを伝えたが、それには自然死がなくなった結果の人口増を抑えるため、生存を制限する法律を制定するという条件がついていた。

最初のHAVI手術が行われてからもうすぐ100年を迎えるという頃、術後100年を経過した人間は死ななくてはならないとした「生存制限法」いわゆる百年法の施行が迫るが、時の総理大臣は世論の動向を考えて、この法律を施行するか否かの国民投票を行うことを発表する。


希望者は誰もが永遠の若さを保てるが、それ故に全てが停滞し様々な社会問題が顕在化した日本で、この国の将来に危機感を抱く官僚や政権を失うことを恐れる政治家、100年後には死ぬということを承諾してHAVIを受けながら、いざ100年目が来た時にはそれを逃れたいとする国民など、さまざまな人間模様を描きながら生と死をシュミレーションした、とても奥が深いSF小説です。

テーマがテーマだけに主人公が複数人いますが、いろいろな考え方をする人々を描いていてとても面白い。

事故や病気以外では死なない世界となり、死なない代わりに成長もなく停滞を続ける日本は、HAVI後の生存期間を100年以下に設定した上で、成功者にはインセンティブとして更なる寿命の延長を認めて社会の変革に成功した中国や韓国の後塵を拝するようになっています。

永遠の命はあっても働く職がなければ生活は苦しいし、階層や世代間の格差社会も広がっていく。

成人した子ども世代と見た目は変わらない親世代とあって、夫婦や家族のあり方も大きく変化していく。

別世界を描きながらも、ここで描かれている問題が今の日本の問題にも繋がっていますので、答えのない答えを求められているようで考えさせられます。

基本はエンターティメントSF小説ですが、示唆に富んだ社会性のある物語で、とても興味深く読みました。

 

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