西條奈加「金春屋ゴメス」☆☆☆

金春屋ゴメス

近未来の日本。関東地方の一部に科学テクノロジーを放棄して江戸時代さながらの生活を営む人々が集まって、独立国家「江戸国」を作り上げた。

この国は鎖国政策をとり、唯一出島で交流しているのは日本だけ。

日本人で江戸に入国を希望する者は、倍率300倍という抽選で江戸国民になれるが、一旦入国したら半年間は出国出来ず、更に一度江戸から日本に出国した者は二度と江戸に再入国する事は出来ない。

主人公の辰二郎は江戸の生まれだが、幼いころに重病に罹り、治療のために日本に出国した青年。

本来は江戸に再入国出来ないはずが、末期がんの父に頼まれ、またとある理由から江戸が入国を認めたために、再び江戸国民となった。

その辰二郎の身元引き受け人となった人物が、江戸で隠然とした権力を持つ謎の人物「金春屋ゴメス」だった。


設定が実にユニークで面白いSF・ファンタジィです。

でも基本設定がユニークなだけで、全体的にはファンタジィというよりも時代小説の風味がいっぱいです。

人工的な国でありながら、江戸時代の江戸そのもののような鎖国国家「江戸」がよく考えられています。

日光江戸村とか太秦の映画村を大きくしたような江戸国で発生している奇病の原因調査が一つのテーマなので、なかなか真剣な物語のはずですが、カリカチュアされた人物や物語の展開に独特のユーモアがあって、とても楽しめる小説です。

何だか遊園地やテーマパークみたいな設定の江戸国、ものすごく興味がわきます。どことなく夢のある作品ですね。


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