ロバート・A・ハインライン「夏への扉」☆☆

夏への扉

1970年12月に、ぼくダニエル・デイヴィスは冷凍睡眠で30年後の未来に行く事を決めた。

親友マイルズ・ジェントリィと二人で始めた小さいけど画期的な製品を作る会社は、マイルズと、ダニエルの婚約者だったベル・ダーキンによって乗っ取られてしまった。

ダニエルが設計し作りあげた製品「文化女中器」も、会社ごと彼の手の届かないものになる。

何よりも製品のアイディアを考えることが生きがいの生粋の技術者ダニエルは絶望し冷凍睡眠で30年後の世界に希望を託すことにする。

冷凍睡眠の費用と30年後に受け取れるように契約した信託財産以外の財産は証券化して、マイルズの義理の娘でダニエルを慕っている11歳の少女リッキーが受け取れるように手配をしたが・・・。


永遠の名作だと評価されるタイムトラベル・テーマのSFです。

ハインラインはSFの名作を何作も書いていますけど、中でも日本の読者には「夏への扉」が好きという人が多いようです。

早川書房から出ていた世界SF全集のハインラインの巻では、この作品と「人形使い」が選ばれていて、管理人はこの両作が彼の代表作だとずっと思っていました。

物語は発明家の男性が、共同経営者である親友と婚約者に騙されて会社を追い出され、冷凍睡眠で30年後の未来に行くが、そこで自分が計画していたような事態になっていないことに気がつく。

折しも誰も知らないことながら、2000年の世界ではタイムマシンが発明されていて、彼はそれを利用して30年前の世界に舞い戻るというような内容です。

ハインラインの作品にしては比較的起伏が少ない作品のように思います。

そして主人公のダニエルは善人だけど技術バカで思い込みが激しくて、物事を熟慮しないで行動にうつるように管理人には見えてしまい、どうも今ひとつ魅力的には思えません。

他の登場人物も底が薄い感じがしますし、物語も出来すぎていると思います。

ただSF小説だけどあまりSFっぽさを感じさせない全体的に独特の情緒がある作品で、展開がスピーディで気持ちが良いので、読後感はスッキリする作品ですね。

発表された当時(1957年)は様々な小道具にも魅力があった事でしょう。


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