ロバート・A. ハインライン「銀河市民」☆☆☆

銀河市民

銀河の辺境にある惑星サーゴンの奴隷市場で売りに出された、傷だらけで薄汚く不健康な少年ソービーを買ったのは、障害を持つ乞食のバスリムだった。

バスリムはソービーを養子にして、乞食とは思えないほど安定した生活と食事を与え、彼が持つ深い教養と知識でソービーを教え導いていく。

実はバスリムの正体は乞食に身をやつした銀河連邦宇宙軍の諜報員リチャード・バスリム大佐で、奴隷制に深い嫌悪を抱くバスリムはこの惑星に入り込んで、奴隷交易の実情を調査しているところだった。

しかしそんなバスリムがある日殺害される。

一人残されたソービーは、生前のバスリムに託された伝言を持って、宇宙港に停泊している自由商人の恒星間宇宙船の船長の元を訪ね、バスリムに借りがあった船長はバスリムの依頼に基づいてソービーを密航させ、銀河連邦宇宙軍司令官の元に向かうことを決めた。


ハインラインらしい胸躍る少年の成長物語が、広大な宇宙を舞台にして語られている、少しジュブナイルの雰囲気がある素直に楽しめるエンターティメントだと思います。

サーゴンでの奴隷生活から始まって、自由商人の宇宙船での生活、更に環境が変わっていくソービーの物語は、それぞれ違った文化・習慣・考え方や生活が描かれていて、それぞれ違った小説を読んでいるような気分になりますけど、それでも統一感があって、ハインラインの物書きとしての上手さが本当に見事です。

主題として「自由」というものを、色々な角度から描いたSFなんだろうと思います。

ソービーは色々な出会いにより、様々な経験を積んで、大きく成長していきますが、その根っこの部分にあって強い影響を与え続けているのがリチャード・バスリムの理念なんだろうなぁ。

沢山あるハインラインの作品の中でも、特に好きな作品の一つです。


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