スーザン・キャロル「金色の魔女と闇の女王」☆☆

金色の魔女と闇の女王

カトリックとプロテスタントが対立する16世紀のフランスが舞台。

かつては不思議な癒しの力を持つとして崇拝されてきた大地の娘たちは、魔女狩りが横行する中で徐々に姿を消していったが、フェール島では今でも多くの大地の娘たちが暮らし、フェール島のレディとしてアリアンヌ・シェニは尊敬を集めていた。

そのアリアンヌを妻に娶りたいと申し入れたのは、ルナール伯爵ジュスティス・ドヴィーユ。

祖父で非情な貴族だった先代伯爵とは違い、厳つい風貌とは逆に繊細な心を持つジュスティスは、道に迷った自分を救ってくれたアリアンヌの姿に魅せられ、大地の娘と同じような不思議な力を持つ祖母の予言もあって、彼女を妻にすることを決めるが、アリアンヌはジュスティスの結婚の申し込みを断っていた。

何としてもアリアンヌを妻としたいジュスティスは、祖母から受け継いだ魔法の力を持つ「愛の指輪」をアリアンヌに贈り、自分の助けが欲しい時に指輪に念じれば必ず助けに来るが、その願いを三回使ったその時には、必ず彼と結婚するという約束を取り付ける。

指輪に願い事などする気がないアリアンヌだったが、まさにその頃、黒魔術を使うフランス王太后カトリーヌ・ド・メディシスの追手を逃れたプロテスタント・ナヴァラ国の大尉ニコラ・レミーが、カトリーヌの手によるナヴァラ女王毒殺の証拠となる手袋を持って瀕死の状態でアリアンヌの元に逃げ込んで来ていた。


白魔術を使う大地の娘と黒魔術を使う魔女との対立、魔女の血を引く偉丈夫の伯爵と彼に惹かれていく大地の娘とのロマンス、魔女狩りを行う修道士、新教徒と旧教徒との対立など様々の要素を取り入れたファンタジックなヒストリカル・ロマンスです。

様々な要素がありすぎて、肝心のアリアンヌとジュスティスとの恋模様がぼやけてしまったような印象を受けますが、実在の人物を登場させて政治的な策謀なども描いているので、単純なロマンス小説に留まらない奥行きがあるように思います。

但し、こういうロマンス小説にありがちな話ですが、どうもヒロインが異常なくらい頑なで、友人や家族が危機に面しているのに、なぜジュスティスの助けを呼ばないのだろうと少々不思議な感じ。

またアリアンヌの妹たち、特に末妹ミリベルの行動も今ひとつピンと来ません。

それでも良く出来た作品だと思いますので、続編も出来たら読みたいと思っています。


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