池波正太郎「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ ☆☆☆

「仕掛人・藤枝梅安」シリーズ

表の顔は腕の良い鍼灸師だが、実は得意のハリを殺しの道具に使う凄腕の仕掛人(殺し屋)藤枝梅安を主人公にした時代小説シリーズです。

晴らせぬ恨みを持つ庶民からの依頼を受けた暗黒街の元締めが、配下の仕掛人に命じて殺しを行うというTVの人気時代劇の必殺シリーズは、この作品が原点になっています。


むかし「あっしには関わりのねえことで」というセリフと長い爪楊枝を口に咥えた渡世人を主人公にした笹沢左保原作の時代劇「木枯し紋次郎」が中村敦夫主演でTV放映され絶大な人気を集めていましたが、確か管理人の記憶では必殺仕掛人が裏番組で放映されてからは、人気は必殺の方に移っていったように思います。

それで必殺仕掛人の設定を利用してオリジナル脚本で生まれたのが、山崎努が念仏の鉄、藤田まことが中村主水を演じた必殺仕置人で、これ以降必殺シリーズが延々と続くようになりました。

池波正太郎の「仕掛人・藤枝梅安」シリーズとしては、「殺しの四人」「梅安蟻地獄」「梅安最合傘」「梅安針供養」「梅安乱れ雲」「梅安影法師」「梅安冬時雨」の7作が発表されています。

主人公は殺し屋ですけど、依頼があれば誰でも殺すというわけでもなく、そこに彼らなりの倫理観があります。

元締めからの依頼で殺しを請負はするけど、理に合わない殺しを依頼してくるような元締めとは敵対することもあるし、金さえ貰えれば誰でも殺すというような殺し屋たちと戦うこともあります。なかなか厳しい世界です。

この作品は「鬼平犯科帳」「剣客商売」と並ぶ池波正太郎の人気時代小説シリーズですが、作品数はそれ程多くないです。

しかし権力者の立場から描かれた捕物帳の鬼平や、どこかおっとりした雰囲気がある剣客商売と違い、江戸の底辺、暗黒街に生きる殺し屋というテーマがテーマだけに、池波作品の中でも激しい作品という気がします。

ただ殺し屋が主人公でも、全体的に暗い雰囲気を感じさせない作品で、そういうところも管理人は好きです。

但し池波正太郎が急逝したため、続きが気になるところで絶筆となってしまい、その点だけは残念です。

      

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