江波戸哲夫「定年待合室」☆☆☆

定年待合室

大手百貨店の前線で活躍していた優秀な営業マンの大和田宏は、実力者の取締役とこれからの百貨店の在り方を巡って衝突し、閑職に異動させられた。

このまま定年まで何もせずに過ごすのかと思っていたところ、妻がガンに犯されたことが判明し、大和田は妻を看病するため早期退職制度を利用して会社を辞める。

それから2年間、今まで苦労をかけ通しだった妻と二人で過ごし、妻を看取って少し落ち着いた頃に昔の馴染みの店「AYA」に顔を出した大和田は、店のママ綾子から大和田が在職していた当時の部下が困っているから助けてやってと頼まれ、ここから大和田の豊富な人脈を使った「人助け」が始まった。


仕事に打ち込んできた企業戦士が、上司との衝突など様々な事情で意に染まない職場で働かざるを得ない状況に陥る。

やる気が削がれ、定年までダラダラ勤めるか新天地を探すか・・・。そんな時に昔の知り合いから手を貸して欲しいと頼まれて輝きを取り戻す。

そんな50代後半から60代にかけてのサラリーマンたちの応援歌のような物語です。

知らぬ間にノイローゼになったり、年老いた親の面倒を見なくてはいけなくなったり、都会の限界集落化した大規模住宅地の問題があったりと、今の日本が抱えている深刻な現状が描かれていますけど、快刀乱麻とまではいかないまでも一つ一つ地道に問題解決に向かっていく様はなかなか心地良いものがあります。

まぁしかし、元々能力の高いデキル人たちが、運に恵まれずに不遇な時を過ごしていたというのが背景ですから、管理人のようにデキないサラリーマンにとってはあまり参考にならない他人事の物語のようにも思えます。

しかしこれからの日本はどこに向かっていくんでしょうかね。


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