テス・ジェリッツェン「外科医」☆☆

外科医

ボストンで発生している一人暮らしの女性を狙った猟奇連続殺人事件は、被害者が腹を割かれ子宮を抽出された後にノドを掻き切られて殺されるという陰惨な事件だった。

ボストン市警のトマス・ムーア刑事と同僚の女性刑事ジェイン・リゾーリは、調査をすすめるうちに事件が南部の都市サヴァナで数年前に発生した連続殺人事件と酷似している事に気がつく。

しかしサヴァナの事件は犯人が被害者に射殺されて終結し、被害者だった女性キャサリン・コーデルは心に傷を負いながらも現在はボストンで外科医として活躍している。

二人の刑事はサヴァナの事件とボストンの事件の関連性を調べるが、そのうち殺人犯の狙いがキャサリンであることが徐々に明らかになっていく。

1年半前に最愛の妻を亡くしてから喪失感に囚われている刑事ムーアは、聖人トマスと呼ばれる公平で冷静で落ち着いた判断が出来る刑事。

その相棒のリゾーリは男性だけの職場で偏見にさらされながらも、手柄を上げて出世したいと考えている直情径行なタイプのタフな刑事で、周りの男達は敵だというような態度でいるが、ムーアの事だけは尊敬している。

美貌の外科医キャサリンは、2年前に勤務先の病院のインターンをしていた連続殺人犯にレイプされ、あわや殺されるという危機を何とか逃れた女性で、今でもその事件のトラウマに捕らわれ男性とは付き合えずに孤独な日々をおくっている。

そんなキャサリンとムーアは、事件の真相を追求するうちに刑事と被害者という立場を超えて惹かれあっていくが・・・。


女性の子宮を抽出してから殺害する連続猟奇殺人犯と、その殺人犯に狙われる美貌の医師、犯人を追う警察官を描いた2002年のRITA賞受賞のサイコ・サスペンスです。

レイプの被害者キャサリンがムーアに心を開いていき、妻の死を引きずっていたムーアもキャサリンに惹かれていく様子を描いたロマンチック・サスペンスですが、いわゆるロマンス小説のような濃厚なラブ・ロマンスとは少々趣きが違うような印象です。

二人が惹かれあうのを見て嫉妬心を覚えるリゾーリの心情や、キャサリンに惹かれている同僚医師などの脇役の気持ちも自然な感じです。

また作者が元医師の女性ということで、医療現場の描写に説得力がある作品です。

面白かったのですけど、ただ何となく物語の進み方がダラッとした感じだったのが少し残念でした。


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