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コニー・ウィリス「ドゥームズデイ・ブック」の感想です。

コニー・ウィリス「ドゥームズデイ・ブック」☆☆☆

ドゥームズデイ・ブック

過去へのタイムトラベルが可能となる技術が開発され、学術目的で歴史研究者が自らが研究する過去の時代に観察旅行に行けるようになった。

オックスフォード大学史学部の女子学生キヴリンは、未だ誰も訪れたことのない14世紀のイギリスに送られるが、大学で原因不明の疾病が発生し、タイムマシンの操作技術者が倒れて、彼女が送り込まれた正確な座標が分からないまま大学は隔離閉鎖される。

一方で、21世紀のウィルスに感染した状態で14世紀に送られたキヴリンも、到着すると同時に倒れ意識を失うが、たまたま通りかかった現地の人間に助けられ、領主の館で人々の看病を受けて奇跡的な回復を見せる。

意識は取り戻したものの、自分が到着した座標が分からず、未来に戻るためのゲートの場所がわからないキヴリン。しかも彼女が暮らす周囲ではペストが蔓延し始める。

薬もなく医師もいない衛生状態が非常に悪い時代で、キヴリンは史学部の恩師ジェイムズ・ダンワージー教授が必ず救いに来てくれると信じて待つのだが・・・。


1993年のヒューゴー賞・ネビュラ賞・ローカス賞を受賞したタイムトラベル・テーマの傑作SF小説です。

21世紀と14世紀というふたつの時代を襲う、それぞれ異なる疫病の恐怖と、過去に送り込まれた女性が現地で遭遇する中々リアルな出来事を描いて、サスペンスにあふれた読み応えのある作品です。

タイムトラベルにおける諸々の問題点を正面から取り上げて真面目に描いた作品で、功を焦る学者の姿や教え子の安否を気遣う指導教授などの描写に説得力が有り、また14世紀側の登場人物も非常に多彩で興味深くよく出来ています。

人気を博したオックスフォード大学史学部シリーズの最初の長編で、タイムトラベルものとしてはあまり捻ったストーリーではないのですけど、読みだすと止まらない面白さですね。