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デイヴィッド・エディングス「エレニア記」の感想です。

デイヴィッド・エディングス「エレニア記」☆☆☆

エレニア記

イオシア大陸には唯一の神エレネを信仰するエレネ人たちの国家群があり、それぞれの国に教会騎士団が置かれ、王家とエレネ教会を守護する聖騎士たちが、大陸の西方に位置し古き神アザシュを信奉する強大なゼモック帝国の皇帝オサと対峙していた。

そうした国家のひとつエレニアの国王アルドレアスが崩御し、アルドレアス王により辺境の地に追放されていた教会騎士スパーホークは、アルドレアスの娘である新女王エラナの命により10年ぶりに帰還する。

しかしエレニアに帰還したスパーホークを待っていたのは、エラナが先王と同じ病に倒れ、教会騎士団の12名の聖騎士と騎士団の教母であるスティリクム人のセフレーニアの魔術により眠りにつき、かろうじて病の進行を遅らせて死を免れているという知らせだった。

エラナの擁護者であるスパーホークは、王国の権力を簒奪しようとする勢力の妨害を受けながら、エラナの病を治癒する力を持つという伝説の蒼い宝石「ベーリオン」を求めて旅に出る。


中世ヨーロッパのような世界を舞台にして、邪悪な古き神とそれを信奉する民族に対して、新しき神々の支援を受けた聖騎士スパーホークと教会騎士団の戦いを壮大なスケールで描いた異世界ファンタジィです。

唯一の神を信仰する宗教と教会ですから、モデルとしたのはローマ・カトリックでしょうけど、一神教の教義で魔術を使わせるのは設定が難しいようで、エレネ教会の教義と矛盾していますが教会騎士団ではスティリクムの若き女神アフラエルの巫女である教母セフレーニアに一種の魔術である「スティリクムの秘儀」を習っています。

このスティリクム人とスティリクムの神々とエレネ人と教会との関わり方も良く描けているように思います。

また悪しき神との対決もそうですが、もう一つのテーマが強い力と意識を持つ宝石・ベーリオンと、それを指輪に加工したトロールのグエリグ、ベーリオンと意思疎通が出来る聖騎士スパーホークとの関係で、エディングスの大作ファンタジィ「ベルガリアード物語」は光と闇の戦いが大きなテーマになっていましたが、この「エレニア記」のシリーズは意識ある宝石をめぐる物語がメイン・テーマになっています。

なお、旧版の「エレニア記」は角川スニーカー文庫から出ていましたが、「エレニア記」の続編となる「タムール記」がハヤカワ文庫から出た関係か、新版はハヤカワが出しています。管理人が読んだのは旧版の方ですが・・・。