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有川浩「フリーター、家を買う。」の感想です。

有川浩「フリーター、家を買う。」☆☆

フリーター、家を買う。

二流どころの大学を卒業して就職したものの、スパルタな社員教育をする会社についていけずにアッサリと辞表を提出して無職になり、以来就職口に恵まれず、自分でもやる気が起きずにアルバイトなどで生活してきた青年・武誠治。

実家に住んでいるので、親はうざいけど生活は楽。

店長がうるさいことを言い出したコンビニを辞めて、しばらくの間は充電期間だと自分の部屋でゲーム三昧をしている最中に、名古屋に嫁いだ姉が帰ってきて誠治を叱責したことから、誠治はやっと自分の母親の異常に気がつく。

近所のいじめに長年一人で耐えていた母親は、誠治の就職に関するプレッシャーなどでついに崩壊し、極度のうつ状態に陥り自殺をほのめかす言動をしていた。

しかし父親はそんな母親の状態を甘えだと切り捨てる。

両親の姿を見て自分の今までの生き方を反省した誠治は、真剣に生きることを模索するが・・・。


嵐の二宮くんが主演して大ヒットしたTVドラマの原作になります。

ホントはデキる子が斜めに構えて生きている間に色々と失敗するものの、ふとしたキッカケから反省して、生き方を変えて頑張るようになり全てが好転していくという「有川ファンタジィ」の世界が広がっています。

厳密に言えば「元フリーター、家を買う。」という事になりますけど、追い込まれて家族崩壊の危機に会ってから、前を向いて歩みだした青年の頑張りが頼もしい作品です。

結局自分が変わらないと人も変わらないと言うことですね。

もちろん、つい先刻までフリーターだった人間が、勤務先でパソコンを駆使して事務処理をガンガンこなして会社を変えていくというのにはリアリティはないですけど、そういう事をあまり意識させない物語の強さがあります。

前半の誠治と後半の誠治は別人です。

少しくらい情けない人間だって、本人の自覚次第で変われるんだよというスタンスが良いですね。

厳しい状況をユーモラスに描いて、自然と勇気が湧いてくるような作品です。

そんなに上手く行くわけないじゃん、という意見はその通りですけど、でもこういう小説って管理人は大好きです。