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東野圭吾「新参者」の感想です。

東野圭吾「新参者」☆☆

新参者

小伝馬町のマンションで一人暮らしの中年女性が絞殺され、警視庁捜査一課の面々と所轄の日本橋警察署の刑事たちが捜査にあたる。

そうした状況の中で、日本橋署に着任したばかりの刑事加賀恭一郎は、所轄警察の捜査官として今でも江戸の面影を残す小伝馬町・人形町の界隈の聞き取り捜査を開始する。

自分のことを新参者だと語りながら、Tシャツの上にチェックのシャツを羽織って、ラフで刑事らしからぬスタイルで町の人達と世間話を重ねる加賀に、町の人達はついつい心を許して、身の回りの色々な事情を語り始めてしまう。


2009年の「このミステリーがすごい」の国内部門1位となった、東京・下町の様々な人間模様を描いた人情物のような趣向の連作ミステリィです。

何故所轄でくすぶっているのか?と誰もが思うような優秀な刑事でありながら、人情に厚い加賀が普通に暮らす町の人々の問題や秘密も解くうちに、事件と直接関係する事しない事が明らかになって行くという趣向が、出世よりも人助けというような加賀の生き方とあいまって、なかなか心温まる作品に仕上がっています。

ミステリィとして本格的な謎解きを期待するのならば外れかも知れませんが、何度も読み返したくなるような素敵な小説だと思います。