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マイケル・マーシャル・スミス「オンリー・フォワード」の感想です。

マイケル・マーシャル・スミス「オンリー・フォワード」☆☆☆

オンリー・フォワード

街がそれぞれ特徴ある地域「近隣区」に細分化され、人々は自分の好みに合わせて住む地域を決められるという近未来。

マフィアが跋扈しドラッグ浸けの売春婦たちが住む近隣区もあれば、一人として人の出入りが許されない近隣区、猫だけが住む近隣区、牧歌的な平和を味わう近隣区など、様々な近隣区が存在している。

そうした近隣区の一つに、勤勉に働き出世を望む人々が住む「行動センター」があり、そこから極めて重要な地位にある男が失踪する事件が発生した。

事件の捜査を依頼された「おれ」こと、特異な能力の持ち主で探偵のスタークは、この難事件の捜査に乗り出す。


英国幻想文学賞とフィリップ・K・ディック賞を受賞した、想像力にあふれた今までにないような奇妙な魅力のSF小説です。

最初の数ページを読んで感じるすっ飛んだ感覚と、実は入念に考え込まれたプロットが見事に融合して、管理人は今までにない不思議な感覚に驚かされました。

フィリップ・K・ディック賞にぴったりな奇想、全盛期の筒井康隆作品のように奔放な想像力で語られる、奇怪で変化に富んだ数々の近隣区、ちょっと醒めた感じのハードボイルド小説の探偵のような主人公とその語り口、徐々に明らかになっていく世界の秘密など、読み進むにつれ驚くことが多い。

初めはただのファンキーで目新しいだけの小説かと思いましたが、読んでみたら感性の鋭いSF小説で、良い意味で裏切られました。

管理人の好みの面白いSF小説です。