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パオロ・バチガルピ「ねじまき少女」の感想です。

パオロ・バチガルピ「ねじまき少女」☆☆

ねじまき少女

2010年のヒューゴー賞、2009年のネビュラ賞受賞作。

化石燃料などのエネルギーが枯渇してゼンマイを動力源に使用している世界。

環境破壊により上昇する海面と世界中に蔓延する疫病、遺伝子操作で作った農作物、突然変異で発生するウィルスとそれに効果があるワクチンの開発はイタチごっこでラチがあかず、台頭する暴力的な原理主義者などで世界は滅亡の瀬戸際にある。

そうした中でタイ王国は独自の遺伝子技術を保持し、遺伝子改良で農作物の独占を図る多国籍穀物メジャーの蹂躙から何とか踏みとどまっている。

そんな暗い世相の中で、タイでは禁止されている日本製のDNA操作で作られたねじまき娘エミコとタイに進出を図っている外国企業の幹部、マレーシアで勃発したイスラム原理主義者の中国人虐殺を生き延びた中国人老人、経済省と対立するタイ環境省の捜査官などの視点から描かれた文明批判的なSFです。

独特の世界観が入っているので、前半部はどうしても説明的な部分が多くゆったりとした流れで物語が進みます。

後半になると展開が早くなって面白くなりますが、全体的には少し読むのが辛いところがありました。

そんなに分かりづらい作品でもないのに、この作品でつらいと感じるようでは我ながら歳を取ったなぁと思いますけど・・・。

ただエンターティメントというよりも現代の文明批判的なところが多い作品ですので、ヒューゴー賞受賞には納得するもののスカっとする類の作品ではありません。