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垣根涼介「君たちに明日はない」の感想です。

垣根涼介「君たちに明日はない」☆☆☆

君たちに明日はない

リストラ請負会社日本ヒューマンリアクトの若き面接官・村上真介は一見するとジャニーズ系のイケメン男性だが、依頼企業のリストラ候補社員に面接して退職条件を提示して、自ら退職するように仕向けていく因果な仕事をしている。

クビ切りにあっても仕方がないような人物も中にはいるけど、大抵の人間は真面目に勤め上げてきた普通の会社員で、リストラに会うのもちょっと運が悪かっただけ。

恨まれたり、なじられたり、泣かれてたり、時には後で暴力をふるわれる事もある気の滅入る仕事をしながら、真介はこの仕事にやりがいを感じている。


「怒り狂う女」「オモチャの男」「旧友」「八方ふさがりの女」「去り行く者」を収録した連作短編ですが、「怒り狂う女」でリストラ対象となった建材メーカーの課長代理・芹沢陽子と熟女好みの真介との恋愛関係を絡ませながら、リストラを勧める真介とリストラ候補者とのやり取りをユーモラスに描いた山本周五郎賞受賞の企業小説です。

リストラされる事情もその受け止め方も生活環境も人それぞれに違い、百人の人がいれば百通りの人生が有るということを思います。

そんな中で主人公の真介が非情な男というよりも、リストラ対象者にとってより良い選択を考えていて、一見チャラチャラしているようでも一本筋の通った人物なのが良いですね。

様々な人間模様をユーモラスに描いている作品はシリーズ化されています。

「君たちに明日はない」シリーズ。

  1. 「君たちに明日はない」(本書)
  2. 借金取りの王子
  3. 張り込み姫
  4. 勝ち逃げの女王
  5. 迷子の王様