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ヴァーナー・ヴィンジ 「遠き神々の炎」の感想です。

ヴァーナー・ヴィンジ「遠き神々の炎」☆☆☆

遠き神々の炎

様々な宇宙種族が情報ネットワークを構築している遠い遠い未来の宇宙が舞台。

光速を超える超速で宇宙航行する「神仙」たちの星域に接するところで、人類は50億年前のアーカイヴを発見するが、調査をしている最中にここに閉じ込められていた邪悪な存在の封印を解いてしまった。

この邪悪な存在は急激な勢いで銀河の情報ネットワークに拡散し、宇宙に大きな災厄をもたらしていく。

しかしその封印の中には、邪悪なものを封じ込めるワクチンのようなものが存在し、生き残った人間の子供たちとともにその星域から脱出する。

彼らがたどり着いたのは、犬型の生物が集合することで一つの知性体となるエイリアンが住む惑星。しかしこの惑星は今まさに権力闘争のまっただ中にあった。

犬型の集合生物の騒乱の渦中におかれた子供たちとワクチンを探して、銀河ネットワーク内で飛び交う様々な情報を交換しながら、救援隊は宇宙の深淵の惑星まで救助に向かう。


センス・オブ・ワンダーに満ちた、壮大な構想の、見事なホラ話のようなSF小説です。

情報ネットワークが張り巡らされた銀河。アーカイブから解き放たれた悪意の塊のウィルスのような存在と、それに対抗するホワイトハッカーのような宇宙の種族たち。そして何と言っても個体が集まって一つの知性体になるという発想を、こういう形で表現したところがスゴイ。

こういう与太話系の物語は、あまり理屈っぽく考えないで、自由な気分で異質な世界を楽しむのが一番です。

全体的な背景は壮大なヴィジョンですが、主に描かれる犬型の集合生物の物語は、権謀術数が渦巻く冒険小説として楽しめて、意外性もあるし、とても面白い作品です。

流石ヒューゴー賞受賞作ですね。