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阿部暁子「カフネ」の感想です。

阿部暁子「カフネ」☆☆☆

カフネ

信頼し上手くいっていると思っていた夫・滝田公隆と離婚が決まり、精神的に不安定だった女性・野宮薫子に追い打ちをかける様に知らされた弟・春彦の急死の報。

大好きだった弟の死に打ちひしがれる薫子だったが、春彦が遺した遺言書から弟の元恋人・小野寺せつなに会う必要があった。

法務局勤務で生真面目すぎる薫子は、奔放で不愛想で我が道をゆくせつなの事は好きではなかったが、食事すらまともに取れないほど精神的に落ち込んでいる薫子の様子に気づいたせつなが無理矢理に薫子の部屋で料理を作ったことから、二人の関係が変化していく。


子供の頃から責任感が強く真っすぐに生きてきたからこそ、自分にも他人にも厳しく、どこか精神的なもろさを持つ薫子、不幸な生い立ちから他人に心を閉ざして生きてきたせつな。

誰に対しても笑顔で人当たりが良かったが、実は心の内を誰にも語らなかった春彦の急死から交わりだした二人が、せつなが務める家事代行サービス会社「カフネ」のボランティア活動に薫子が参加する事で、それぞれが抱えていた問題に向き合い、乗り越えていく姿が描かれています。

シンプルないい話で終わる物語かと思っていましたが、それだけでない色々と考えさせてくれる作品でした。