アンソニー・ホロヴィッツ「カササギ殺人事件」☆☆☆

カササギ殺人事件

ロンドンの中堅出版社の女性編集者スーザン・ライランドは、名探偵アティカス・ピュントが活躍するアラン・コンウェイの人気ミステリィ・シリーズの最新作「カササギ殺人事件」の原稿を自宅で読んでいた。このミステリィが自分にとってどんな事件を巻き起こす事になるのか知る術もなく・・・。

「カササギ殺人事件」は1955年の英国サマセット州の田舎町サクスビー・オン・エイヴォンにある准男爵サー・マグナス・パイのパイ屋敷の家政婦メアリ・ブラキストンが階段から転落死した事から始まる。

初めは単なる転落死だと捉えられていたメアリの死だったが、実は村中の人間から詮索魔として嫌われていたメアリが息子ロバートと死の数日前に口論し、ロバートが母親の死を望むような事を口走ったことから、ロバートがメアリを殺害したのではないかとの憶測がまことしやかに囁かれていた。

田舎町のこうした噂は生活に関わる。

ロバートの婚約者のジョイは思い悩み、ロンドンの有名な探偵アティカス・ピュントの元を訪れて助けを乞うが、ピュントには体よく断られる。

依頼は探偵が何とか出来るような事ではないということもあったが、何よりもピュントは不治の病にかかり残された命があと数ヶ月という状態だった。

善良な若い娘の依頼を断ったことに良心の呵責を覚えていたピュントは、その翌日にパイ屋敷の主人マグナス・パイが何者かに惨殺されたとの新聞記事を読んで、これは只事ではないと、病を押してパイ屋敷に向かった・・・。


架空の作家アラン・コンウェイが書いたミステリィ「カササギ殺人事件」と、自宅から飛び降り自殺したアラン・コンウェイの死の謎を追う編集者スーザン・ライランドの姿を描いた入れ子構造のミステリィとなっていて、上巻は「カササギ殺人事件」、下巻はスーザンの一人称で描かれています。

2つの物語が交差して・・・というミステリィは良くありますけど、この作品は一部と二部がある程度分かれていて、それでいて関連しているという見事な構造、しかも両方共興味深い本格的な謎解きミステリィで本当に驚きました。

下巻に入ってスーザンが怒り狂うように、管理人も思わず何で・・・と驚いてしまいました。

描写も丁寧だし、特に上巻の雰囲気は古き良き時代の探偵小説そのもので、アティカス・ピュントはエルキュール・ポワロを彷彿させるし、これだけで何となくウレシクなるような作品です。

管理人が近年読んだミステリィの中では最高傑作と言えるかも知れない。面白かったです。

 

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