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アマンダ・クイック「黒衣の騎士との夜に」の感想です。

アマンダ・クイック「黒衣の騎士との夜に」☆☆☆

黒衣の騎士との夜に

好奇心が旺盛で世界中の様々な事象に深い興味を抱き、いずれは修道院に入って学究の道に進む事を夢見る女性アリスは、両親亡き後、足に障害がある弟ベネディクトと一緒に、父の遺産を横取りした叔父の家で家事全般を引き受けて暮らしていた。

勝気で頭の良いアリスには、実は叔父も従兄弟たちも頭が上がらない。

そんなアリスの住む館を、非情なヒューと呼ばれ誰からも恐れられている屈強な騎士が訪れてきた。

彼は自身の領地から盗まれた伝説の緑の石をアリスの従兄弟が行商人から購入したという話を聞き、石を取り戻すべくやってきたのだった。

しかし従兄弟が土産としてアリスに贈った石は、何者かに盗まれて今はアリスの手元にない。

石を差し出せと迫るヒューに対して、アリスはヒューに協力して一緒に盗まれた石を探す事を提案するが、その提案に対してヒューが要求した条件は、何とアリスがヒューと婚約すると言うことだった。

君主から与えられた領地を治めるために、出来るだけ早く自分にふさわしい妻を娶る必要を感じていたヒューは、誰もが恐れを抱く自分に対して物怖じせずに応対するアリスこそが自分に相応しいのではないかと考えていた。

修道院に入りたいアリスはヒューの提案に難色を示すが、口やかましいアリスを追い出したい叔父は、ヒューの出した条件に一も二もなく賛成する。

かくしてアリスは不本意ながらヒューと共に緑の石を探し、ヒューの領地に向かうことになるのだが・・・。


アマンダ・クイック(ジェイン・アン・クレンツ)の作品らしい天然の可愛らしい女性と、カリスマ性のある表向きは非情だが心中は優しい男性との、掛け合い漫才のような、とても楽しいロマンス小説です。

戦場においては無敵で、冷静で公平な態度で部下や領民に接し、非情なヒューなどと呼ばれている冷徹な騎士ですが、アリスに対しては無骨ながらも愛情を示し、アリスもそんなヒューにいつしか惹かれていきます。

ヒューの婚約者としてヒューの領地に入ったアリスが、思いやりと勇気、そして薬草などへの豊富な知識を駆使して領民たちの信望を集めていき、最後にはヒューと結ばれるというストーリーがユーモアを交えて楽しめる小説で、明るくて後味が良い作品ですね。