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吉田秋生「海街diary」の感想です。

吉田秋生「海街diary」☆☆☆

海街diary

しっかり者の看護師の幸、地元の信用金庫に務める大酒飲みの美人・佳乃、スポーツ用品店で働く変わり者・千佳の香田三姉妹は、祖母が残した鎌倉の古い家に3人で暮らしている。

両親は15年以上も前に離婚し、若い女性と暮らすために家を出た父に続いて、母親も再婚して新しい夫と新しい家庭を築き鎌倉から離れた。

そんな姉妹の元に、ある日父の訃報が届く。

父が出て行った時にはまだ子どもだった佳乃や千佳は、父の死と聞いてもピンと来ないが、仕事で忙しいという姉・幸の頼みで、父の葬儀に参列するため山形の小さな町に向かった。

そこで二人を迎えたのは、三姉妹の異母妹にあたる中学1年生の浅野すずだった。

すずの実母は既に病死していて、今暮らしている母と双子の弟はつい最近になって父が再婚した女性とその子ども。

気丈なすずは、夫の死に動揺する義母を助けて、涙も見せずに葬儀に参列しているが、遅れて葬儀に出た長女・幸はそんなすずに感謝の言葉をかけ、初めて会った姉の言葉をきっかけにすずは号泣する。

血の繋がらない頼りない家族と暮らすすずに対して、幸は「鎌倉に来て一緒に暮らさない?」と誘いかけ、それを承諾したすずと4姉妹での生活が新しく始まった。


すずを加えて4人になった若い姉妹それぞれの悩みや日々を描いた、心が豊かになるようなエピソードが続く奥の深い作品です。

ハッピーエンドとは言えないようなエピソードもありますけど、それでも後味が悪い話はなく、人生の機微のようなモノを感じさせる物語が多くて、生きているということはそれだけで素晴らしいなぁと感じます。

また舞台となっている鎌倉の街が、格式と親しみやすさを感じさせるように描かれていて、こういうところに住みたいと思わせてくれます。

登場人物は基本は善人ばかりだし、ユーモラスなやり取りはおかしいし、画も親しみやすくて、こういう作品、管理人は好きだなぁ。

2018年12月に刊行された第9巻で終了しましたが、姉妹それぞれのこれからの人生の予感や終わらせ方も素直にきれいで、もう一度最初から読み直したいと思いました。

エピローグのような短編も収録されていて、なんだかしみじみとした読後感がたまりませんね。とても素敵な作品です。