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羽海野チカ「3月のライオン」の感想です。

羽海野チカ「3月のライオン」☆☆☆

3月のライオン

事故で家族を失い、父親の友人だった棋士幸田八段に育てられた少年桐山零。

現名人宗谷冬司以来の中学生でプロ棋士となり、一度は進学せずに棋界に身を置くが、心機一転高校に入り直し、幸田の家を出て東京の川沿いの下町で一人暮らしをしている。

将棋に天賦の才を現して幸田に可愛がられるが、幸田の実の娘と息子に疎まれ、いたたまれなくなり一人暮らしをしている孤独な17歳だったが、先輩棋士に連れて行かれた飲み屋でホステスをする川本あかりと知り合い、世話好きなあかりの家に呼ばれて、あかりの妹ひなたとモモに懐かれるようになって、徐々に心を開いていくようになる。


天才少年棋士を主人公にした将棋マンガで、どこか懐かしい趣きがあるヒューマン・ストーリーです。

複雑な育ちの零と川本家の人たちとの触れ合い、零のライバルで腎臓に持病を持つ熱き少年棋士二海堂晴信や二海堂の兄弟子島田八段などとの戦いと交流などを交えて零の成長を描いています。

物語の途中では、学校でいじめに会うひなたの物語や、複雑な環境の川本家の問題なども描かれています。

優しく勇気あるひなたや川本家の人たちのいじめに向き合う態度が理想的に過ぎるかもしれないけど素敵です。

本人は意識していないながらも、ひなたの精神的な支えとなる零の姿も結構感動的でした。

2012年10月23日現在で7巻まで刊行されていますが、これからいよいよ新人王となった零が宗谷名人と将棋を指す場面になります。

典型的な少女マンガの絵ですが、棋士たちの姿も的確に捉えていて読み応えがありますね。

2011年のマンガ大賞を受賞していますが、大賞にふさわしい作品だと思います。早く続編が出ないものか楽しみにしている作品の一つです。