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ダン・シモンズ「殺戮のチェスゲーム」の感想です。

ダン・シモンズ「殺戮のチェスゲーム」☆☆

殺戮のチェスゲーム

この世界には、他人の心の中に入り込み、自由自在に人を操る能力を持つ異能者(マインド・ヴァンパイア)がいた。

彼らには人間らしい倫理観は欠如し、自分の楽しみだけで人を操り思う通りにしてしまう。

3人の老ヴァンパイアが集まり会食した後、その中の一人の老女が自分の執事に襲われる。

執事は彼女が完全にコントロールしていたはずだったが、彼女に積年の恨みを晴らそうとした別のヴァンパイアが執事を支配し彼女を襲わせていた。

不意を突かれた老女は逃げ惑いながらも、たまたま近くに現れた人間をコントロールして執事に立ち向かわせ、操られた人間をボロボロにして老女は逃れて自分を襲ったヴァンパイアを殺害する。

ヴァンパイアに操られた人間同士が殺し合いをした不可解な事件。

捜査を進める保安官ジェントリーは、事件に巻き込まれ殺害された男性の娘ナタリーと知り合い、二人して精神科医のソールの元を訪れる。

若かりし頃にナチの収容所に囚われ、マインド・ヴァンパイアのナチス大佐に精神を支配されたことがあるソールは、この事件の影には他人を思うがままに操る超能力者の存在があると語るのだが・・・。


ヴァンパイアと言っても他人の血を吸うわけでなく、人の心を操ることで活力を得て長命となった人間たちです。

元々は人間でありながら、人間ならざる能力を持つが故に、残忍な権力欲に囚われてしまい倫理観を失くしたマインド・ヴァンパイアたち。

マインド・ヴァンパイア同士の権力闘争と、それに巻き込まれてしまう普通の人間、父の敵を討とうとする女性、若かりし頃に出会った絶対悪に対抗しようと心を決める老精神科医などを交えて、複雑で不気味なゲームが展開されていきます。

一番不気味なのは認知症になってしまった老女のマインド・ヴァンパイアで、マインド・ヴァンパイアの中でも強力な能力の持ち主なだけに波乱を巻き起こしていきます。

もう少しカラっとした話のほうが管理人の好みですけど、ダン・シモンズらしい複雑な構成の物語が展開され、迫力がありました。