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ドン・ウィンズロウ「フランキー・マシーンの冬」の感想です。

ドン・ウィンズロウ「フランキー・マシーンの冬」☆☆☆

フランキー・マシーンの冬

62歳のイタリア系アメリカ人フランク・マシアーノは、生まれ育ったサンディエゴで早起きして朝からサーフィンを楽しみ、真っ当な4つのビジネスを掛け持ちし、地元の行事には惜しみなく寄付をして、誰からも愛される男だった。

別れた妻とは今でも友人で、医師を目指す一人娘との週に一度の会食を楽しみにして、サンディエゴでブティックを経営する元ダンサーの美女を愛人にしている。

そんなフランクの前に、ある夜ロサンゼルス・マフィアのボスの息子が現れ、フランクの助けを乞う。

フランク自身はとっくに引退した積りでいるが、かつての彼は「フランキー・マシーン」と呼ばれた、マフィアの中では知らぬ者のない凄腕の殺し屋だった。

凋落したマフィアに昔のような勢いはないし、ボスもボスの息子も間抜けではあるけど、義理堅いフランクは頼まれた通りデトロイト・マフィアの大物との交渉の場に同席する事に同意する。

しかしそれは、何者かがフランクを始末しようとして仕掛けた罠だった。


すごく面白い作品でした。

主人公は62歳の老ギャング、かつては凄腕の殺し屋だったけど、自分で納得した殺ししかしないし、一般人を巻き込むような真似はしない、

それなりの美学をもって生きてきたタフな男で、稼業から足を洗って随分と経つ。そんな彼が狙われる。誰が何のために・・・。

もちろん自分の人生を振り返れば、彼に恨みを持つ人物はいくらでも思いつくフランクだったが、今更自分を狙う意味が分からない・・・。

下っ端ギャングだった頃の回想を交えながら、フランクを狙うマフィアたちの襲撃とFBIの追跡を躱しつつ、陰謀の真相に近づく老ギャングを描いた傑作サスペンスです。

筋を通して生きてきた一人の男の生きざまと、彼が暮らしてきた非情な世界を描いていますが、時折妙に雰囲気がノスタルジックになるし、時にはユーモラスな印象さえ受けるサスペンス・ミステリィで、読んだ後も納得出来る作品でした。