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山田風太郎「伊賀忍法帖」の感想です。

山田風太郎「伊賀忍法帖」☆☆☆

伊賀忍法帖

愛妻を奪われた伊賀忍者・笛吹城太郎と根来七人衆との壮絶な闘いを中心に描いた、びっくり仰天の忍法小説です。

忍者というよりも怪人といった方がしっくりくる人外魔境の登場人物たちが、人を人とも思わずに好き放題に暴れまわり、倫理も何も有ったもんじゃないといった感じで展開するアダルト・マンガのような小説で、主人公の伊賀忍者・笛吹城太郎が、亡き妻に瓜二つの美女・右京太夫を守り、妻の敵である松永弾正の野望を阻止せんと孤軍奮闘する物語は圧巻です。

1958年(昭和33年)に発表された作品ですが、今読んでも古臭い感じが全くしません。

この世のものとは思われぬ忍者たちや幻術士が、この世では許されぬような技を使っている姿が非人間的な魔界の住人みたいで、アクション・ホラーのような何でもありのハチャメチャな世界が繰り広げられていきますが、そうした中で幻想的な美学のようなものがチラっと見えているのが、山田風太郎の世界なんでしょうね。

こんな忍者たちを操れたら、松永弾正は簡単に天下を取っちゃうでしょうけど、そんな理屈を考えて読むのは、この作品の場合は邪魔になるだけです。

多分、こういう小説がダメな人はさっぱりでしょうけど、管理人には新鮮に感じられてすごく面白かったです。