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ゴードン・R・ディクスン「ドラゴンになった青年」の感想です。

ゴードン・R・ディクスン「ドラゴンになった青年」☆☆☆

ドラゴンになった青年

大学で中世史の研究をしている青年ジム・エッカートは、霊体プロジェクションなる少し怪しげな研究をしている化学者のアシスタントをする恋人アンジーを訪ねたところ、アンジーが彼の目の前で異次元に送り込まれてしまうところに遭遇する。

何とかしてくれと科学者を怒鳴ったところで、科学者も呆然としているだけで、アンジーを戻す方法が分からない。

早くアンジー助けなくちゃと、ジムは自ら志願してアンジーの跡を追って異次元に向かうが、たどり着いた先は中世ヨーロッパ風の魔法が使える世界で、ジム自身はなぜか巨大なドラゴンの身体に乗り移っていた。

しかもドラゴンになったジムは、消えたアンジーは「暗黒の力ある者たち」に囚われている事を知らされる。

アンジーを救うために、ジムは「暗黒の力ある者たち」に立ち向かおうと決めたが・・・。


愛する恋人を救うため意を決して飛びこんだ異世界だが、気がつくと自分がドラゴンになっていた。

勇ましい気分でいたのに、とんでもない状況に右往左往するという、気が抜けてしまう様な馬鹿らしさで始まるユーモア冒険ファンタジィです。

ひねりの効いたユーモアが可笑しくて、尚且つそれが不思議とバカらしさを感じさせないところが良いですね。

ジムを助けるために正義の味方風に登場する魔法使いは、世の中のバランスと自分の勘定残を考えながら、乏しいお金を使うかのような感覚で魔法を使います。魔法もけっして無制限に使える訳ではない世界です。

ドラゴンの風体をしているため、ドラゴン退治に来た騎士に狙われたりしながら、魔法使いや知り合った仲間のドラゴンなどの力を借りて、アンジーを捕らえている「暗黒の力ある者たち」と対決するジムが、勇敢ですけど滑稽で楽しい。

「暗黒の力ある者たち」という悪役が今ひとつ分かりづらいですけど、この作品は品の良い上質のユーモアが笑える英国幻想文学賞受賞の冒険ファンタジィです。

尚、続編の「ドラゴンの騎士」もこの作品とは趣向が少し変わっていますが、なかなか面白かったですね。