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奥田英朗「マドンナ」の感想です。

奥田英朗「マドンナ」☆☆☆

マドンナ

40代の働き盛りの中年サラリーマンを主人公にしてサラリーマンの悲哀や可笑しさを描いた5編の短編を収録しています。


表題作「マドンナ」は、42歳の課長さんが17歳年下の総合職の女子社員に恋をしてしまう物語。

別に自分の恋人にしたいとか何かしたいとか言うのとは違って、涙ぐましい純愛に近いような感情が湧き起こる過程が、読んだ当時は同じ中年サラリーマンだった管理人には分かるような気がしました。

気恥ずかしく笑いながら、頷いてしまうユーモラスな作品です。

「ダンス」は突然ダンサーになりたいと言い出した高校生の息子と、同じ部内の協調性がないように見える同期課長とをからませて、男の友情と父と子の微妙な関係を描いたサラリーマン小説です。

「どっちも好きなこと言いやがって、少しのガマンが出来ないのか」と思いながらも、結局は振り回されざるを得ない立場の主人公が可笑しい。良い人ですね。

「総務は女房」は、2年の期限付きでバリバリの営業部から閑職の総務部課長へと移動した大企業のエリート・サラリーマンの困惑を描いた作品で、部全体を巻き混んだ業者との癒着とかが有って、これがまた妙に面白かったですねぇ。

「ボス」は同じ歳の中途採用の才媛が自分の上司になってしまって、男の職場を変革されて嘆く課長を描いた小説で、これまた笑えます。

「パティオ」はちょっとしみじみとする雰囲気がある作品。


どの作品にも共通して、しっかり者で気の強い奥さんが登場しますが、これがまた身につまされるよなぁ。

とても面白い短篇集で、管理人は好きです。