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奥田英朗「我が家のヒミツ」の感想です。

奥田英朗「我が家のヒミツ」☆☆☆

我が家のヒミツ

家日和」「我が家の問題」に続く、いろいろな形の夫婦や家族の姿をユーモラスに描いた人情味あふれる6篇の物語を収録した短篇集です。


「虫歯とピアニスト」は、歯科医院に受付嬢として勤務する女性が、虫歯で顔を腫らした有名なピアニストが患者で現れたことから、子どもが産まれない自身の葛藤を乗り越えていく話。

「正雄の秋」は同期入社で気が合わないライバルとの昇進レースに敗れた53歳のサラリーマンの憂鬱と、それを支える妻の物語。「何であいつが・・・」と感じるこういう気分は分かるなぁ・・・。

「アンナの十二月」は、母親の再婚相手を父親だと思って暮らしてきた女子高生が、売れっ子演出家である実の父親に会って舞い上がってしまう話。彼女の周りの人たちがしっかりしているのが良いですね。

「手紙に乗せて」は 妻を亡くして茫然自失となった父親と同居することにした若い広告マンの息子の物語で、人が死んだときの距離感の描き方が秀悦です。おじさんたちが突然涙を堪えきれなくなる姿って、この歳になるとよく分かります。

「妊婦と隣人」は、早めの産休で暇を持て余している女性が、隣の部屋に越して来た怪しいお隣さんの様子が気になって仕方がなくなる話。ユーモア・サスペンス風に展開していきます。

「妻と選挙」は、作家の奥さんが市議会議員選挙に出馬する話で、我が家の問題で収録されている「妻とマラソン」の続編的な話です。何だか作者一家がモデルっぽいですけど、普段は距離感があっても絆が強い家族の姿がおかしく、どこか感動的です。


いろいろあっても人生は捨てたもんじゃないよというテーマの小説で、明るく楽しくて、管理人はこういう作品はホントに好きです。