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ジェイン・オースティン「説きふせられて」の感想です。

ジェイン・オースティン「説きふせられて」☆☆☆

説きふせられて

ジェーン・オースティンの死後に発表された最後の作品。どこかしっとりと落ち着いた雰囲気のある恋愛小説です。


従男爵ウォールター・エリオットの次女アンは、優しい母を13歳の時に亡くして以来、父親と姉・妹の面倒を見ながら暮らしてきた。

落ち着いた女性に成長したアンは海軍士官ウェントワースと結婚の約束をするが、ウェントワースが貧しい青年であったため周囲の人たちは結婚に反対し、優しく聡明ではあるけど少し意志が弱いアンは説得に負けてウェントワースとの婚約を解消してしまう。

それから8年の歳月が流れた。

エリオット家は経済的に困窮し、アンが妹の嫁ぎ先に出かけて妹たちの面倒を見ている間に、父と姉は自邸ケリンチ邸を人に貸して、自分たちは別の場所に移ることを決めてしまう。

ケリンチ邸を借りたのは海軍提督のクロフト氏だったが、アンはそこでかつての婚約者ウェントワースと再会する。大佐に昇進したウェントワースはクロフト提督の妻の弟だった。

8年後の今もウェントワースとの婚約破棄を後悔し彼を忘れられないアンと、アンを今でも愛しているウェントワース。しかし再会もお互いに気まずく・・・。


従男爵エリオット家の3人姉妹の次女アンを主人公にしたオースティンらしい恋愛小説です。

家名を守ることに汲々とし、名門意識は強くても経済観念や思いやりに欠ける家族と、優しく人の良い女性アン。

オースティン作品らしく特に大きな事件が起こるわけでもなく、淡々と物語は進んでいきますが、19世紀初頭の英国の田園風景と上流階級の人々の風俗・習慣が良く描かれています。

階級の高さから世間の尊敬を集めている人々が実は低俗で退屈だったり、上流階級から軽蔑されている階級の人たちがかえって教養が高く思いやりがあったりと、オースティンの作品で常に描かれている情景が、生き生きと明るく書かれていて、やはりオースティンは良いなぁと思います。

オースティンは自分の身の回りの事を越えた作品が書けない、という理由で「一流の作家とは言えないんじゃないか」と言う評論家がいましたが、日常の中で暮らす人たちを鋭く観察して、時には暖かく、時には辛辣に人間性を描いたオースティンの作品は多くの人が名作と認めているし、管理人は大好きです。