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ジュード・デヴロー「時のかなたの恋人」の感想です。

ジュード・デヴロー「時のかなたの恋人」☆☆☆

時のかなたの恋人

他人に気を使い自己主張することが少ない気立ての優しいアメリカ女性ダグレスは、旅行先のイギリスで恋人と口論になってしまう。

ダグレスにちやほやされることに慣れている恋人は、自分の思い通りにならない事に怒って、ダグレスを置いてけぼりにして立ち去る。

ダグレスが置いていかれた場所は由緒ある教会の前。恋人に去られて教会で嘆き悲しむ彼女の前に、突然昔の貴族のような奇妙な風体をした男性ニコラスが現れてダグレスを魔女呼ばわりする。

ニコラスの話では、彼は16世紀のイギリスの伯爵で、無実の罪で死刑宣告を受け獄につながれていたはずが、ダグレスの泣き声でこの世界に呼ばれてしまったとの事。

プロポーズされる事を期待していた恋人に去られた上、突然現れた変人が自分を非難する事にうんざりしながら、人の良いダグレスは成り行きからニコラスの面倒を見ることになってしまうが・・・。


ジュード・デヴローの小説はチョット変な話が多いのですけど、この作品はとても面白いロマンチック・ファンタジィです。

16世紀から来て、スコーンを頬張りながら、こんなに美味いものは食べたことがないという表情を浮かべるニコラスの面倒を見ているうちに、ダグレスはニコラスにドンドン惹かれていきます。

そしてニコラスもまた、気立ての良いダグレスに心を許して、いつの間にか二人は恋人同士になってしまう。

しかし二人が愛を確かめ合った時、ニコラスは突然16世紀の世界に戻ってしまう。

またもや恋人に去られたダグレスが悲嘆にくれてニコラス所縁の教会で祈りを捧げていると、今度はダグレスがニコラスの住む16世紀のイングランドへ突然タイムスリップしてしまいます。

但し彼女が転移した時代は、ニコラスが反逆罪で囚われの身となる前で、ニコラスにはダグレスの見覚えがない。

前半は過去から来たニコラスが現代社会に驚く様子が描かれ、後半は未来から過去に行くダグレスが中世で苦労する話で、タイムスリップ・テーマを2度楽しめる構成が見事です。

しかも未来を知っているダグレスが無実の罪で処刑されるニコラスを助けようとしても、肝心のニコラスはダグレスの話に聞く耳を持ちません。

そうした中でダグレスがどのようにニコラスを助けるのか、また二人の恋の行方はどうなるのか?という物語で、管理人はこの小説を読んでロマンス小説に対する見方が変わりました。

ハーレクイン風のロマンス小説を読み慣れていない人も楽しめる作品だと思います。