ジョン・スコルジー「レッドスーツ」☆☆☆

レッドスーツ

銀河連邦宇宙艦隊の旗艦イントレピッド号に配属された新任少尉ダールは、配属してまもなく奇妙な違和感をこの宇宙船に感じ始める。

ダールと同時に配属された同期の仲間4人とこの違和感について会話をするものの、誰もがこの船はどこか変だと話すものの、どこが奇妙なのか明確に説明出来ない。

宇宙艦隊の旗艦として危険な任務に挑み、大きな犠牲を払いつつそれなりの成果を挙げているイントレピッド号だが、艦長以下5人の上級士官たちは、どんな危地に挑んでも不死身の帰還を遂げるのに対して、普通のクルーの死亡率は異常に高い。

上級士官の姿を見かけると艦内に走る緊張感。

更にどんな難問が起きても、科学の普遍的な法則を破ってまで解決策を導き出す不思議な機械ボックスの謎。

一般クルーの死亡率からして、このままでは自分たちの命も危ないと考えたダールは、艦内で起こっている現象を説明してくれそうな行方不明のクルーを探そうとするのだが・・・。


それほど斬新なアイディアのSFではありませんが、奇想天外な情況をドタバタ・ギャグにせず、かと言って極端にシリアスな話にもせず、絶妙なバランスで展開していく冒険SFにしたところが素晴らしい傑作SF小説です。さすがのヒューゴー賞&ローカス賞受賞作。

基本はスタートレックのパロディになっている作品で、何かのパロディのような風変わりな世界という点ではフレドリック・ブラウンの「発狂した宇宙」を連想してしまいます。

エンターティメント冒険SFですけど、おしまい近くになると、どこかしみじみとした味わいがあり、ただの冒険SFにとどまらず人間について考察した奥行きがある作品という印象を受けました。

なかなか読み応えのある楽しいSF小説です。


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