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東野圭吾「祈りの幕が下りる時」の感想です。

東野圭吾「祈りの幕が下りる時」☆☆☆

祈りの幕が下りる時

加賀恭一郎シリーズの10作目となるミステリィです。

物語は仙台に流れ着いた物静かな女性・田島百合子が小さなスナックに雇われてから、病により亡くなるまでが、まず描かれます。

田島百合子の雇い主・宮本康代は百合子の死を近親者に連絡したいと思い、百合子が親しくしていたスナックの客・綿部俊一に何とかならないか頼み、綿部は百合子の息子・加賀恭一郎の連絡先を康代に伝えた後に行方をくらます。

それから10年ほどが過ぎ、加賀の従兄弟で警視庁捜査一課の松宮は、小菅のアパートで殺害された滋賀県在住の女性・押谷道子の事件を追っていた。道子は明るく面倒見のよい性格で、他人に恨みを買うような女性ではない。

捜査をすすめるうちに、道子は滋賀から中学の頃に親しくしていた演出家・浅居博美を訪ねた後に消息を断った事が分かるが、その後の足取りがつかめない。

しかし浅居博美が加賀恭一郎の知り合いだった事から、松宮は加賀に助言を求め、徐々に事件の全貌が現れていく・・・。


どこで何がどうつながっていくのか、途中までは皆目見当もつきませんでしたが、読み終えてみれば、流石だなぁという印象です。

人生の皮肉のようなもの、ふとしたことが人生の転落に繋がる不思議などを感じるミステリィです。

殺人事件の謎を追求する物語ですから、当然ハッピーエンドと言うことはあり得ないのですけど、家族の情愛が見事に描かれています。但しあまり現実的ではないようにも思いましたが・・・。

松本清張の「砂の器」を連想しましたが、「砂の器」ほどの重みは感じませんでした。そういう点では現代的と言う感じがして、ミステリィとしては管理人はこの作品の方が好きですね。