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東野圭吾「夢幻花」の感想です。

東野圭吾「夢幻花」☆☆

夢幻花

第26回(2013年)の柴田錬三郎賞を受賞したサスペンス・ミステリィです。


元競泳のオリンピック候補だった大学生・秋山梨乃は、西荻窪の一軒家に一人で暮らしている祖父・秋山周治を訪れ、居間で倒れていた周治の遺体を発見する。

祖父は何者かに殺害された。通帳や現金などが盗まれているようで、多分物盗りの犯行らしい。

正義感が強いが他人との付き合いがあまり好きではなかった祖父は、花を愛し庭で沢山の花を育てていた。

梨乃が周治宅を訪れたのも、そんな花好きな周治が栽培した花の写真や記録をブログにしてあげようと考えていたからだった。

周治が亡くなる前にとても珍しいと言っていた黄色い花。しかし何故かこの花の鉢植が庭から消えていた。

周治はこの花をブログにアップするのは待ってくれと言っていたが、鉢植がなくなった事が気になった梨乃は、祖父が他界したことと共に黄色い花の写真をブログにアップして、この花の正体を知っている人がいたら連絡をして欲しいと書き込む。

そのブログを見て連絡してきた植物学を研究している企業の代表だという蒲生要介に素人は手を出さない方が良いと言われた梨乃だったが、どうしても事実を突き止めたいと蒲生の住居に向かい、そこで知り合った蒲生要介の弟・蒼太とともに真相解明に乗り出す。


プロローグが2つあり、それがどんな風に本筋に絡んでいくのかなと思いながら読みました。

やっぱり東野圭吾のミステリィは面白い。どうにも途中で止められなくなって一気に読んでしまいました。

単純な犯人探しに留まらずに、有望な競泳選手でオリンピック候補にまでなったのに、競泳の道を諦めた梨乃や、家族の中で一人疎外感を抱えていた蒼太の気持ち、また別居している息子に父親の在り方を示すために捜査に邁進する刑事・早瀬などの人間模様も散りばめられていて、最後には収まる所に収まる展開もなかなか見事です。

ものすごく凶悪な人物が登場するでなく、ストーリーも破綻することなく進んで、楽しめるミステリィでした。