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伊坂幸太郎「死神の精度」の感想です。

伊坂幸太郎「死神の精度」☆☆

死神の精度

「死神の精度」「死神と藤田」「吹雪に死神」「恋愛で死神」「恋路を死神」「死神対老女」の6篇の短編を収録した連作短編集です。

タイトルにある通りに、主人公は人間の生死を判定する役目を帯びた一人(?)の死神で、千葉と名乗っています。

寿命が尽きたり、病死だったりするような死に方ではなく、突発的な事故などで死んでも良い人間かどうかを一週間観察して判断して、それを上司に報告するのが仕事です。

但し判定はほとんど「可」、要するに死んでも良いという判定を出します。死神たちに人間のような感情はなく、対象となる人間たちに興味もない。

人間はいずれは死ぬものだし、事情がある人間に同情して生かしておいてやろうと考えることなどないのです。

そんな死神・千葉と、彼の調査対象となった人間たちそれぞれのドラマを描いたファンタジックなミステリィ短編集です。


作品はそれぞれ独立した物語で、千葉は変化自在に姿を変えて、死ぬ予定の人間の前に現れて、一応は彼らを観察します。人間の姿をしていますが、頓狂な物言いや行動がどこかユーモラスです。

人情モノのような物語が多くて、そこにミステリィの要素を少し加えた作品が多かったですね。

それぞれに趣向を凝らした独立した連作短編でありながら、最後に繋がっていく辺りに作者の工夫を感じました。