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伊坂幸太郎「グラスホッパー」の感想です。

伊坂幸太郎「グラスホッパー」☆☆

グラスホッパー

最愛の妻を怪しげな会社フロイラインを経営する寺原のバカ息子に殺害された元教師の鈴木は、寺原の会社に入社してバカ息子に復讐する機会を伺っていた。

復讐のためには会社に命じられた違法行為も辞さない鈴木だったが、勤めだしてから一月が過ぎた頃に、上司の比与子に行きずりの若い男女を殺害するように命じられる。

鈴木の正体を疑った寺原が鈴木の忠誠心を試すためだと言うが、これが出来なければ鈴木が殺されてしまうらしい。

しかし立会人としてやって来たバカ息子が、誰かに背中を押されて車道に飛び出しクルマに轢かれて死んでしまい、それを「押し屋」と呼ばれる殺し屋の仕業だと騒ぐ比与子に命じられて、鈴木はバカ息子を押したと思われる男の後をつけた。

一方で標的を自殺に追い込んで殺す殺し屋の鯨は、政治家秘書を殺した部屋の窓から、押し屋の犯行を目撃していた。

鯨は昔の出来事の決着をつけるため、押し屋を探すことを決めるが・・・。


一応はサスペンス・ミステリィなんでしょうけど、なんだか良くわからない暗黒街の住人たちを描いた現実感ゼロの奇妙なサスペンス小説です。

人を自殺に追い込む殺し屋、ナイフ使いの名人の若い殺し屋と彼を雇っている男、裏社会に顔が利く寺原と彼の会社、人を押して殺す押し屋、そして人が良くて嘘が苦手だが、復讐に我を忘れているような気弱な男・鈴木。

登場人物も現実感がないし、描かれた世界も現実感がないし、発生する事件も現実感がない。

しかし設定がバカバカしい割には、さくさく読めてしまうところが不思議ですね。

真面目なミステリィではなく、不条理な世界を描いたサスペンスと言った印象ですけど、それでもエンターティメントとして破綻していないところが凄い。