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森薫「エマ」の感想です。

森薫「エマ」☆☆☆

エマ

家庭教師を引退してロンドンで暮らす老婦人ケリー・ストウナーのメイドとして15歳の時から雇われているエマは、ケリーを訪ねてきた彼女の元教え子ウィリアム・ジョーンズと知り合い、身分の違いを感じさせない接し方を自然にするウィリアムに惹かれる。

イギリスでも有数の貿易商ジョーンズ家の跡取り息子で、何不自由のない生活をしている上流階級のお坊ちゃんウィリアムも、控え目だが美しく知性を感じさせるエマに関心を寄せる。

こうして知り合ったエマとウィリアムは、身分の違いがありながら、お互いに強く惹かれていくのだが、エマの雇い主でエマに普通のメイド以上の教育を施したケリーが死去したことで、エマはウィリアムの元を去っていく。


全10巻のコミックですが、本編は7巻までで残りの3巻は番外編になります。

番外編にはスピンオフのような短編が幾つか収められていますが、一番最後はエマとウィリアムの婚礼の日の出来事ですから、番外編といっても関係あるか・・・。

すごい作品ですね。身分制度が色濃く残るイギリスで、メイドと紳士の恋愛など現実には到底考えられないのでしょうけど、こういう風な作品を描き上げるとは驚きです。

当初はもっと淡々と当時の風俗を描きながら、二人が大した事件もなく結ばれる話だと思っていたので、山あり谷ありの展開は予想外でした。

もう少し色々と書き込める場面もあると思いますけど、登場人物が多彩でよく描かれていると思います。

ジェーン・オースティンのコミック版といった感じすら受けました。

またこの作者は絵が上手ですね。

初めのうちは今ひとつぎこちない感じでしたが、巻を追う毎に絵が上手になっていきます。

時々安野光雅を連想させるような景色が描かれていて、ヴィクトリア朝のイギリスが身近に感じられます。

素晴らしい作品だと思います。