面白い本を探す

ラフカディオ・ハーン「怪談・奇談」の感想です。

ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)「怪談・奇談」☆☆☆

時折外国の方が日本人以上に日本のことを知っていたりして驚くことがありますが、この短篇集にもそれと似たような驚きを感じます。

日本の伝承・昔ばなしを自分なりに整理して発表した作品集ですが、昔の日本人はこういう考え方をしたかもしれないと感じさせる説得力があるし、何より全体的に気品が感じられます。

有名な「耳なし芳一のはなし」や「雪おんな」だけでなく、この作品で初めて知った物語も多いのですが、どの話にも現代の日本人とは少し違った古い日本人の価値観が息づいているように思います。

どこか日本的な怨念のようなものを感じさせる作品が多く、男女の世界、特に女性・人妻の嫉妬や情念、夫に忘れられた恨みが形になって現れてくる怖さのようなものを描いた作品が多いように思います。

夫に恨みを抱き亡くなった妻が、化生となって夫を殺そうと駆けまわる。その怨念から逃れるためには、夜が明けるまで妻の背中にしがみついていなくてはならない。妻の背中に隠れて震えている夫など、ある意味滑稽でもありますが、油断して見つかってしまえば八つ裂きにされる訳で、やはりそういう場面を想像すると怖い。

そんな風に、非日常の怖さがリアルに目に浮かんでくるような作品が多い。

怖くて不思議な話が多いのですが、それでも描かれている情景が美しく、また明治以前の日本の香りがどこか漂ってくるような感じのする作品です。