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ロレイン・ヒース「愛を刻んでほしい」の感想です。

ロレイン・ヒース「愛を刻んでほしい」☆☆☆

愛を刻んでほしい

アメリカ南部の小さな町シダーグローヴに生まれ育ったクレイトン(クレイ)・ホランドは、南北戦争が起き南軍兵士として徴兵された際に、大儀なき戦争に参加して同胞を殺す事は出来ないとして従軍を拒否した。

クレイは戦争忌避者として南軍に捕らわれ、処刑寸前のところで南軍の敗戦が決まったために故郷シダーグローヴに帰った来たが、そのクレイを待っていたのは、囚われの身となっていた間に亡くなった両親の墓と3人の弟、そしてクレイを卑怯者として蔑み一切の付き合いを断つ町の人々だった。

シダーグローヴの若者の多くが南軍兵士として参戦し戦死している。

クレイの親友カークもこの戦争で戦死していた。

カークの妻メグ・ウォーナーは、カークの親友としてカークと共に戦うべきだったクレイが戦争から逃れ、恥知らずにも生き延びて町に戻ったことに我慢が出来ず、何とかしてクレイに己の罪を自覚させたいと願っていた。

メグはクレイに戦没者の記念像を彫らせる事を思いつくが、それは彫刻の名手として知られたクレイを自らの臆病さに向かい合わせるためだった。

メグから依頼を受けたクレイは、メグの狙いを知りながらも自らの気持ちを表現しようと記念像の制作を引き受ける。

命をかけて自分の信念を貫き通す強い意志と、他人に対するいたわりの心を持つクレイは、実は物心ついた時からメグのことが好きだった。

しかし親友カークもメグに恋をし、カークとの賭けに負けたクレイは遠くからメグを見つめる事で気持ちを慰めていた。

メグはそんなクレイの気持ちには気づかず、大好きなカークと夫婦になり、これから幸せな家庭を築こうとした矢先に戦争が起こり、夫は戦死したのにクレイは生き延びた。

今のつらさをクレイのせいだと思い込むメグだったが、クレイが彫刻を刻む場所に出向き、クレイと共に過ごす時間が増えてくるに従ってクレイの真実の姿が見え始め、憎しみは徐々に愛に変化していく。

しかし人目を気にするメグは、自分の気持ちに素直になれないでいたが・・・。


悲惨な戦争とそれに振り回され傷ついた人々がテーマの小説ですが、基本はロマンス小説ですので深刻なテーマの割には暗い雰囲気はあまり感じません。

傷ついた人々の再生の話でもあるので、最終的には前向きで奥行きがある物語になっています。