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リサ・クレイパス「想いあふれて」の感想です。

リサ・クレイパス「想いあふれて」☆☆☆

想いあふれて

19世紀の英国ロンドン、真冬のテムズ川に女性の死体が上がったとの連絡を受けて駆けつけた捕り手のグラントは、死人と間違えられた虫の息の美しい女性を目にして驚愕する。

何者かに首を絞められ川に落ちたこの女性は、以前グラントと言い争いになった事を根に持ち、彼の悪評を広めた高級娼婦のヴィヴィアンだった。

折りあらばヴィヴィアンに復讐をしようと考えていたグラントは、気を失っているヴィヴィアンを自宅に運び治療を行う。

グラントの手厚い看病の甲斐あって何とか意識を取り戻したヴィヴィアンは、彼女に自分の悪行を思い知らせてやろうと構えていたグラントの思惑に反するように一切の記憶をなくし、かつての高慢さはすっかり影をひそめて、まるで別人のように教養と思いやりのある理想的な女性になっていた。

グラントはヴィヴィアンを憎悪しながらも、彼に絶対の信頼を寄せるヴィヴィアンに強く惹かれ始める。そして記憶を失ったヴィヴィアンは、時折見せるグラントの冷たい態度に戸惑いながらも、グラントの優しさ逞しさに惹かれていく。

二人はヴィヴィアンの記憶を取り戻し、殺人未遂事件の解決のため調査を始めるのだが・・・。


19世紀の英国を舞台にして、後に警察官の元となったと言われる治安判事所属の逮捕係「ボウ・ストリートの捕り手」を主人公にしたヒストリカル・ロマンス・シリーズの1作目の作品です。

絶世の美女で有りながら奔放で傲慢で人を見下すヴィヴィアンを蔑んでいたグラントが、全く別人のように控えめで優しい女性になってしまったヴィヴィアンに対して困惑し惹かれてしまうところが面白いロマンス小説です。

ヴィヴィアンはその傲慢な態度や見かけとは裏腹に、本当は落ち着いた女性だったという風に展開するか、実はこの女性がヴィヴィアンとは全くの別人だったとなるのか、この辺りの展開が読めませんでした。

ただヴィヴィアンを襲った犯人探しに関しては、それ程驚くような事はありません。

ボウ・ストリートの捕り手という、あまり馴染みのない職業の人物をヒストリカル・ロマンスの主役にして物語を作っている辺りが新鮮な感じでした。