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原田マハ「楽園のカンヴァス」の感想です。

原田マハ「楽園のカンヴァス」☆☆☆

倉敷の大原美術館で監視員として働くシングル・マザーの早川織江は、若かりし頃ソルボンヌ大学出身の新進絵画研究者として海外で高い評価を受けていたが、とある事情から研究者の道を諦めて日本に戻り、今は母と娘と3人でひっそりと暮らしていた。

そんな織江はある日館長から呼び出しを受ける。

館長と同席していたのはアンリ・ルソーの絵画展を企画している新聞社の学芸部長で、彼の話では展覧会の目玉としてルソー最後の作品「夢」を借用したいとMoMAに申し入れたところ、MoMAのキュレーターでルソー研究の世界的権威ティム・ブラウンは、日本側の窓口が早川織江であれば考えると答えたという。

誰にも話したことはないが、実は織江とティム・ブラウンは17年前にルソーの絵画の真贋を巡って競いあった事があった。


織江の現在から始まる物語は、17年前に起きた出来事をティム・ブラウンの立場から語られる物語へと変わっていきます。

17年前の出来事とは、人前に姿を現さない伝説の美術品コレクターの大富豪から依頼された、ルソーの「夢」とそっくりの「夢をみた」という絵画の真贋鑑定。

鑑定はティム・ブラウンと早川織江という若く美しい新進気鋭の研究者の二人が、それぞれ行う。

二人はこの絵画にまつわるとして渡された古書を1章ずつ読み、7日後にその理由とともに真贋を判定し、コレクターが納得した鑑定を下した方が「夢をみた」の権利を譲られるという。

ルソー研究者のプライドをかけて挑戦する二人の前に提示される物語の謎。ルソーの晩年の貧しい生活や、新しい時代を迎えて新しい芸術を模索するパリの芸術家たち、天才ピカソとルソーと「夢」のモデルとなったヤドヴィガとその夫との関係などの物語は、読みだすと興味が尽きません。

殺人事件や盗難事件が起こるわけではない、こういう形のミステリィでこれほど引き込まれるとは意外でした。

ただ管理人はとても楽しめましたが、ルソーや近代絵画にあまり興味を持っていない読者はどうなんでしょうね。

管理人はミステリアスな物語にワクワクしながらも、絵画などの芸術が人に与える影響などが心に残りました。素敵な物語だと思います。