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佐藤雅美「一石二鳥の敵討ち 半次捕物控」の感想です。

佐藤雅美「一石二鳥の敵討ち 半次捕物控」シリーズ ☆☆

一石二鳥の敵討ち 半次捕物控

江戸の岡っ引き半次を主人公にした連作時代小説の9作目で、このシリーズの最終話となる作品です。

小三郎の罵倒/王子稲荷結願の御利益/稀代の悪党和田山龍円/外し忘れた魚籠の値札/物ぐさ女房の恩返し/丸亀塩商人怨霊の祟り/一石二鳥の敵討ち/日笠源之進、返り討ちの後始末 の8編を収録しています。


このシリーズに限らず、佐藤雅美作品は独特の時代考証で江戸時代に対して新しい見方を示してくれて実に興味深く面白い。

中でも話として出来過ぎという気もしますが、「物ぐさ女房の恩返し」は面白かったです。

一応は法治制なのに、その法が今ひとつ矛盾に満ちていた江戸時代を象徴するような出来事から大金を手に入れる物ぐさな女というのが笑えます。

最終話の「日笠源之進、返り討ちの後始末」も、クセのある剣客だが意外と人情家の姿を見せる蟋蟀小三郎や、半次の鮮やかな解決策でスッキリとして終わって、後味が良かったです。


ユニークな視点で江戸時代を見事に切り取った佐藤雅美先生ですが、とても残念なことに2019年7月29日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。