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朱川湊人「花まんま」の感想です。

朱川湊人「花まんま」☆☆

花まんま

「トカピの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の6篇を収録した第133回直木賞受賞の短編集です。

全体的に差別を受けている人や貧しい人々、心に傷を受けた人などに対しての暖かい視点が印象的で、昭和生まれの管理人にはどこか懐かしさを感じさせてくれる作品が多かったと思います。

どの作品も少し不思議な出来事が起こります。

カラッとした明るい不思議さというよりも、死と隣り合わせのような空気を感じる作品が多く、作品の舞台になる昭和30年代・40年代の大阪の下町の人と人がぴったりとくっついて生きている社会を大阪弁で語っていて、そうした非日常の出来事と現実の世界が不思議に調和しているように感じます。

管理人が子どもの頃に暮らした東京の下町も、この作品の舞台とどことなく似たような雰囲気がありましたから、昔を思い出して懐かしい気分になりました。

心に残る短篇集で良かったです。