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辻村深月「鍵のない夢を見る」の感想です。

辻村深月「鍵のない夢を見る」☆☆

鍵のない夢を見る

心の中に影を持つ女性を主人公にした5つの物語、第147回(2012年上半期)の直木賞を受賞した短編集です。


「仁志野町の泥棒」は、母親と参加したバスツアーのガイドさんが、小学生の頃に一時親しくしていた友達だったことから昔を回想する物語で、嘘についての考察がなかなか奥深い短編だと思います。

「石蕗南地区の放火」は、田舎の共済で働く36歳の女性と、地元消防団の独身ベテラン団員の話。主体性がない割には自意識過剰気味の女性と、見栄っ張りの役場勤務の消防団員が、何だか割れ鍋に綴じ蓋という感じで、そこに放火事件が絡んで展開していきます。

「美弥谷団地の逃亡者」は、ご近所サイトで知り合った自分勝手な彼氏と九十九里浜に来た女の子の話。DV絡みで新聞の人生相談や三面に載るような関係が描かれています。

「芹葉大学の夢と殺人」は、画家を目指していた女性と、彼女が大学で出会った変わり者の男性との物語。地に足がついていない夢を追い求める人間はいますけど、この彼氏は極端すぎる。それを重々承知していながら、別れるに別れられない女性の心理が描かれています。

「君本家の誘拐」は、欲しくて仕方がなかった赤ちゃんが出来て、子育てノイローゼのようになっていく女性を描いた作品。現実にいるタイプなんでしょうけど、自分が一番という事を無自覚に主張する人は、あまり好きになれないなぁ・・・。


何となくエキセントリックな性格の登場人物が多くて、管理人は今ひとつ共感しづらい印象でした。

しかし現実の世の中にも、なぜこのような事件が起きたのか?という事がありますし、人の心の中というのは計り知れません。

そういう点では心の不思議さをリアルに描いた作品なのかも知れませんね。